先人の家づくりを見ると、材料の使い方がとても素晴らしいのです。
日本は雨が多く湿度が高い、その気候がもたらせたものが豊かな大地と森林です。
そこから木材がとれ、紙がつくられる、日本の家は、木と紙そして土でつくられてきました。 そうした自然の材料は再び土に戻る、まさしく自然循環がなされていました。
また木や紙そして土など自然素材の素晴らしさは、湿気の調整機能です。
湿気は、季節や天候で大きく変わりますし、湿度は、温度で大きく動きます。
木や紙、土の素晴らしさは、湿気の多い時は吸い、乾燥すると放出するという調湿機能にあります。 そうした材料を、建物にたくさん使うことで、建物の中の湿度は安定してきます。
流れる空気でこうした自然素材を守りながら、これら材料の調湿機能を生かすというノウハウは大変に素晴らしいものです。
木材は湿気を吸うと少し膨らみ、湿気を吐いたときに少し縮みます。
それを寸法が狂うと言って嫌い、合板や集成材が今や主流となっていますが、その結果、調湿機能を失い、さらには建材の接着剤に含まれる化学物質がもたらす害が加わり、 自然の肌触り、感触のよさも失われてしまいました。
最近の建物の居心地の悪さは、この合板や集成材に帰するところが大きいのです。
接着剤などの添加物によって、化学物質過敏症がもたらされたのはご存知のとおりです。
しかし、無垢の木などの自然素材は呼吸できる環境、すなわち流れる空気にふれる場所で使われなければ、調湿機能は上手くはたらかずに湿ったままの状態になり、 カビやダニの温床になり、やがては腐ってしまいますし、シロアリも付きやすくなります。
この「流れる空気にふれさせる」という先人の知恵を、私たちは現代の家づくり、そしてリノベーションに甦らせました。
簡単に見てみますと、まず外張り断熱、そして内壁と間仕切り壁に空気を流し、調湿性能の高い下地材を使い、自然素材で仕上げます。間取りは広がり空間で、風通しと家族のふれあいを促進します。
1977年から続く、この家づくりのスタンスはリノベーションにも応用が利くものです。